英文校正・論文投稿エディテージ お見積もり・ご注文 論文執筆リソース Editage Insights オンラインシステム
iStock_000003401233XSmall

科学を読む(3)非科学者はSTAP細胞問題をどう読むべきなのか・その1 過熱報道のいい面と悪い面

by • March 24, 2014 • 科学を読むComments (0)5375

STAP論文問題に対する過熱報道は、研究コミュニティにどんな影響を与えるのか?

1月のNature論文発表から2ヶ月、三重県ナガシマスパーランドが誇る絶叫コースター、スチールドラゴンのような運命をたどっているSTAP細胞論文。私は疑惑が浮上してすぐ本社ムンバイに出張したため、日本で火種がネットを触媒に大火事になるのを遠くからはらはらしながら眺めていまして、理研の記者会見があった翌日の3月14日(土)、成田空港からの帰りにすべての新聞を買い込んで驚愕しました。1面トップどころか、各社最低3面は紙面を割いての大事件扱い。科学がここまで世間の話題になったことはかつてあっただろうか?(いや、ない)。

エディテージでは何年も前から論文出版倫理、捏造や剽窃の問題について研究者の方向けの学習コンテンツ提供やワークショップにかなり力を入れてきましたので、テレビ局からも「御社のエディテージインサイトに掲載してあるあのネタ、テレビで紹介してもいいですか?」というお問い合わせもいただきました。

このSTAP論文問題、研究コミュニケーションのサポートを行っている企業の人間としては、論文投稿に関する多くの課題が浮き彫りになった深刻な事件だと考えています。ただ、なぜSTAPが日本で絶えず起きている他の深刻な論文不正問題以上に国民の関心を集めたのかについてはやや違和感を感じます。最近ではノバルティス社ディオバンに関する臨床研究不正事件、元東京大学教授の研究室で起きた43本の論文撤回事件など、日本でも大規模な論文不正の問題が起きています。考え方はいろいろあると思いますが、紙面のサイズで比較して「東大論文43本のRetractionとか、国民の健康に直接の不利益を与える可能性のあるノバルティス事件のほうだって、若手研究者の1本の論文と博士論文の疑惑よりよっぽど紙面を割いて大きく取り上げられるべきだったんじゃないの?」とちょっと思います。話題性って予期できないものがありますね。

STAP報道の過熱には、いい面と悪い面があります。私たちのような研究者サポート企業が一番懸念する「悪い面」は、ごく一部の研究者が関与した科学スキャンダルによってそれ以外の大多数の日本の科学力を上げるために毎日こつこつ実験をして事実を積み上げ、丁寧に論文を書いている研究者の方たちの国民評価や信頼性まで下がってしまうこと。それが結果として将来、研究費の支給や研究システムの自由度になんらかの縛りをつけてしまう可能性があることです。科学報道ってぶっちゃけ「ノーベル賞」「医療技術の進歩」「宇宙開発」ぐらいしかポジティブなニュースって国民に届いてないですよね。数的にいってネガティヴなニュースのほうが圧倒的に多い。これってフェアじゃないよな、何とかならないのかな、と心配になります。

一方で、「いい面」はこのSTAP報道によって研究コミュニティ内部でも、国民にとっても、報道の力で科学教育や研究倫理意識の高まりが一気にすすむことだと思います。新聞各社の科学系記者のみなさんが「キター!今こそ科学記者の力を見せてくれる!」ってな勢いで(想像ですが)、ジャーナルの査読システムとは、とか剽窃・盗作・捏造の違い、とか、科学における再現性とは、といった記事を新聞や雑誌に掲載しています。論文出版関連業界の人間ではなかなか作れないような誰にでもわかりやすい良質のチャートや解説が大量に世間に出回ってきました。私なんかも新聞を読んでいて「ちょっとー、この~新聞の記者の○○さんが作ったチャート、うちのエディテージインサイトに載ってるやつよりずっと良いじゃん。うち負けてるじゃん、見習おうよ」と社内で発破をかけたりしています。

悪いニュースはよき未来の始まり、今の痛みは将来の糧だと私は思います。すでにぼうぼうに燃え広がってしまったSTAP問題、これを現状を変えるための起爆剤にするしか道はありません。そもそも政府も研究業界も、論文不正の問題についてはこの事件が起こる前からすでに「何とかしなきゃ」と思ってすでにある程度動いていたと思いますが、この事件を通じて大学や件の研究所、日本の研究コミュニティ全体に付いた傷は、同じ問題が起きにくい環境を作るための議論やエグゼキューションを加速させて、よりよい未来にもっと早くたどりつくきっかけになることを願います。

※カクタスでも、共催しているScience Talksの活動の中で「[STAPフォーラム] STAP細胞研究問題から見える、日本の研究システムの問題点と解決策は?」というトピックを立てて、研究者の皆さんからの意見やアイディアを募集しています。ぜひご協力ください。

————————————————–

AiKanoh.jpg

加納 愛/Ai Kanoh
カクタス・コミュニケーションズ
グローバルブランディングチーム
シニアマネージャー

勤務地 Mumbai, India

 

Pin It

Related Posts

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>