英文校正・論文投稿エディテージ お見積もり・ご注文 論文執筆リソース Editage Insights オンラインシステム
kagaku

科学を読む(1)論文至上主義を否定せよ!マイケル・ニールセン『オープンサイエンス革命』

by • December 28, 2013 • 科学を読むComments (0)4949

研究のゴールとは、論文を書いて出版すること、で本当にいいのだろうか?

―マイケル・ニールセン著「オープンサイエンス革命」は、論文という枠組みを超えた本来科学が進むべきオープン化の未来と、それを阻むさまざまな科学の世界の社会問題を提起した本です。

OpenScience

新年まであと残りわずかですね。エディテージのブランティング担当の加納です。
この「科学を読む」は、最近読んだ研究・科学に関連した面白い本や記事を紹介しながら、これからの学術業界の動向について勝手に想像して楽しむ連載記事です。

さて、のっけから自社ブランド、エディテージの存在価値を否定するような表題ですが、論文って必ずしも科学の発展に必要不可欠なものなんでしょうか?

近年はジャーナルがデジタル化してオープンアクセスも広がっていますが、研究出版の世界ってなんだかアナログですよね。研究→論文書き→有名雑誌に出版→引用GET…→研究費・うまくいけばテニュアGET、っていうこのしくみ、気の遠くなるような長いプロセスです。研究データは大量にあるのに論文化されて世に出る成果はごく一部。データがもったいない、時間ももったいない。

私は長くオンライン・マーケティングの世界で仕事をしていますが、マーケティングの世界では「出版された専門書なんか、古くて間違いだらけだから読んでもムダ」という業界の暗黙知があります。技術は日々刻々と進歩し、消費者トレンドも月替わりで変化する時代。マーケの本なんて著者が書いてから印刷されてAmazonに上がるまでに半年以上かかるので、初版で発売日に買ったとしても、本に載ってる知識はもうすでに古くて使えなくなっています。代わりにリアルタイムの情報や学びが行き交うウェブでケーススタディやトレンドの情報収集をして使うのが普通です。

そもそも科学は先行研究に布石を積み上げ発展していくことで成り立っている、いわばリアルタイム・クラウド型イノベーションの歴史的原型のようなもののはず。ウェブもオープン化も科学から享受した進歩であるはずなのに、なぜ研究の世界はいつまでも、出版社を通じた論文のジャーナル掲載、という古いモデルのまま何百年もたいした進歩がなかったのか?『オープンサイエンス革命』ではその原因のひとつとして、研究者を論文のみによって評価する硬直したシステムと、そのせいで研究者がデータを出版前に公開することにインセンティヴを得られない現状を指摘しています。

極端な話、今は画期的な研究結果をいち早く世界に発信したくて「こんなん出ました!」とブログに公表したとしても、研究論文として出版されてなければその研究は存在しないのと同じです。アイディアを盗まれて誰かに先に論文に書いて出版されてしまったら「負け」なわけですよね。でもせっかくの発展が「出版するまで秘密」にされてる時間だけ、科学の発展もまた遅れてしまうというジレンマ。なんだか論文至上主義が科学の発展を阻む原因のひとつのように思えてきます。

ちなみに皆さんは世界最古の英語の学術雑誌がいつ創刊されたかご存知ですか?
ウィキってみますと(最近Wikipedia検索することを巷ではウィキると言うらしいです)、世界最古の英語科学雑誌は「フィロソフィカル・トランザクションズ(The Philosophical Transactions of the Royal Society) 」という1665年に創刊された雑誌です。その時代にあっては、出版は新しい科学的発見を世界に広く公表して更なる発展を促すもっともスピーディな手段だったわけですが…。それから350年。ウェブがコミュニケーションの主要なツールになり、誰もがブログやSNSで瞬時に世界に情報発信できる世の中で、科学コミュニケーション技術だけが、何かの分厚い壁に阻まれて時代のスピードに追いついてないような気がしなくもありません。

著者マイケル・ニールセンは、Wikipediaの試みやLinux(リナックス)などのオープンソースプロジェクト、ヒトゲノム・プロジェクトなどさまざまなオンライン・クラウドを使ったイノベーションの例を取り上げながら、科学が本来あるべき「オープン・サイエンス」の姿を描きだしています。研究者の皆さんの研究成果が論文という形を取る必要なく瞬時に世界に公開される時代が訪れたとき、エディテージの中心サービスである論文の英文校正や翻訳、論文投稿支援サービスは皆さんにとって必要ないものになってしまうかもしれません。エディテージを運営するカクタスも倒産の危機、社員みんなが路頭に迷う…なんてことにならないよう、私たちも時代にあった新しい研究コミュニケーションの形を提案していけるように風向きを読んでいなければいけないな、と改めて考えさせられました。

そんな時代、いつ来るんでしょうかね?ちなみにヨハネス・グーテンベルクが活版印刷を開発したのが1445年だそうです。その後初めての英語雑誌刊行の1665年まで220年かかっています。ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)が一般公開されたのが1990年。それから15年たらずで起きた今のオープンアクセスの波を見ていると、ウェブというツールそのもののヴァイラル・スピードは伝統的な出版と比較にならないくらい速いので、サイエンスがオープン化に至るまでには、さすがに200年待つ必要はなさそうですが…。さてさて、どうなるんでしょうか。

————————

AiKanoh.jpg

加納 愛/Ai Kanoh
カクタス・コミュニケーションズ
グローバルブランディングチーム
シニアマネージャー

勤務地 Mumbai, India

 

Pin It

Related Posts

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>