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ノーベル賞アナトミー2013(4)化学賞と失敗の哲学

by • October 15, 2013 • ニュース, ノーベル賞2013Comments (0)2530

さて、ノーベル賞ウイークから連載を続けているエディテージのノーベル賞アナトミー2013。科学トリビア的な感じで「へー」と思ってお読みいただけていれば幸いです。たとえ研究者であっても、自分の分野とかけはなれた研究はたとえノーベル賞級でも案外知らなかったりしますよね。国際賞は科学の一般向けプロモーションとしても重要な意味を持っているんですよね。

ノーベル化学賞ですが、2013年は化学シュミレーションをコンピュータ上で可能にしたハーバード大学、マーティン・カープラス氏、スタンフォード大学、マイケル・レビット氏、南カリフォルニア大学、アリー・ワーシェル氏の3名に贈られました。医学生理学賞、物理学賞に引き続き、またも数名の共同受賞です。今は委員会も、3名に絞るのすらすごく大変な時代なんじゃないでしょうか。

3名は、化学反応の過程をコンピューターで計算する「多重スケールモデル」を開発しました。現在、コンピュータは科学研究のほぼ全ての分野で使われています。コンピュータは日常生活のあらゆるところに存在し、今や手紙を書くというシンプルな行為ですらコンピュータなしに行う人は少なくなってきました。でもかつては複雑な科学的モデリングや計算を手作業で紙を相手にやっていた時代もあったんですよね。私も学生時代に解析ソフトを使った研究をしている友人に教授が「俺の時代はデータは紙に集めて、統計だって手計算していたもんだ」としみじみ語っていたのを思い出します。化学の分野でも同様でコンピュータ技術がいまや必要不可欠。この3名の研究者は分子の再現や化学反応をコンピュータ上でできるようにしたわけです。科学博物館なんかでプラスチックのボールと棒でできた化学分子のモデルを見たことがあると思いますが、ああいったモデルをコンピュータなしで作るのは大変ですよね。

わずか数十年で私たちははるかに進歩し、ケミカル・コンピューティングに役立つ進歩の一つが今年のノーベル化学賞で認められました。受賞者たちは、古典物理学と量子物理学の両方を使ったコンピューティングの方法を考案し、化学プロセスのさらなる理解に貢献しました。ノーベル賞委員会は、彼らの受賞理由を「複雑な化学システムのマルチスケール・モデルの開発」と簡潔に説明しています。

マーティン・カープラス氏はフランスのストラスブール大学とハーバード大学、マイケル・レビット氏はスタンフォード大学、アリー・ワーシェル氏は南カリフォルニア大学で勤務しています。カープラス博士とワーシェル博士は化学部に所属していますが、レビット博士は実はスタンフォード大学医学部の教授です。

ノーベル化学賞は今まで計105の賞が、166人の受賞者に贈られてきました。日本人の受賞者は計7名、そのうち6名は2000年代の受賞で、日本は化学が強い国として国際的に認知されています。昨年2012年は、アメリカのロバート・レフコウィッツ氏とブライアン・コビルカ氏が共同で「Gタンパク質共役型受容体の研究」により受賞しました。フレデリック・サンガーは唯一ノーベル化学賞を二度受賞している受賞者です。今まで、化学賞を受賞した女性は4人しかいません。ノーベル化学賞はさまざまな研究部門に貢献した受賞者に贈られていますが、統計では、物理化学とそのサブ・カテゴリ、化学構造、有機化学のいくつかの分野と生化学での発展に賞が与えられやすいということが明らかになっています。

ちなみにノーベル化学賞受賞者の中で、キャラクターの強さで私の記憶に最も強く残っている方は、当時日本で最も一般的に注目されて一種の社会現象になった島津製作所田中耕一さん。「失敗からは必ず新たな発見がある。最近は、失敗するのが楽しみになってきました。」というすばらしい名言を残されています。何十年もかけてひとつのテーマに取り組む研究者の皆さんは、ただ天才であるだけでなく、前向きさとひたむきさで常人を超えているんだろうなと感じます。私なんかは失敗だらけで、化学シュミレーターならぬ失敗シュミレーターがあればいいのに、と思う毎日ですが…。どなたか開発してくれないでしょうか。

残るは経済学賞ですね。このシリーズ、もうしばらく続きます。

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執筆者
ラビ・ムルゲサン/Ravi Murgesan 
カコリ・マジュムダール/Kakoli Majumdar

加筆 
加納 愛/Ai Kanoh

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